ランニング言いたい放題

ケニア人のフォームやベアフットランニングについて書いてるブログです@須合拓也

ケニアの食事情から見る、食とランナーの関係性についてのある仮説

食事はアスリートにとって大切なものだと広く信じられています。

通常、食事では栄養をバランスよく、かつトレーニング量に見合ったカロリーを摂取することが推奨されます。

ただし、食事と人間の肉体、運動パフォーマンスとの関係性はメカニズムの部分においてまだまだ未知の部分が多く、科学的な検証と証明が待たれている分野です。

 

なので素人が簡単に口出ししてよいものではありませんが、今回はケニアでの経験から思いついたことを反論は承知の上で書いていきたいと思います。

 

まずはケニアでの食事についての経験から始めます。

 

ケニアに滞在したときの食べ物の話は別の記事(歴史と食から見る日本人の武器は「超長距離」)でも触れましたが、ケニアは基本的には大地が豊かな場所が多く、農業にむいています。

生産される食物も栄養が十分に含まれており、かつ農薬が使われていないことが多いので、実際に食べたところ野菜や果物、穀物は非常においしかったです。

あくまで栄養素の含有率とか調べたわけではなく、あくまで人の感覚でしかありませんが、同行した他の日本人の方からも同じ感想を伺ったので、それほど的外れではないと思います。

 

ただ、これがケニアのランナーに限ると話は違ってきます。

 

前回の記事(ケニア人の骨盤前傾の秘密はハムストリングスにある?)で少し書きましたが、ケニア人でランナーを目指す人は元々決して豊かではありません。

日本の様に子供の時からずっとお腹いっぱい食べてきたわけではないのです。

そしてケニアにあるトレーニングキャンプでも所属している選手は十分に食事がとれているとは言えないのが現状です。

(参考:Running with Kenyans 〜トレーニングキャンプに潜入!! | 吉野剛の裸足ランニング

 

穀物や野菜や果物は比較的多めですが、肉や魚を食べる機会は週1・2回とかなり少ないそうです。

もしかするとタンパク質の摂取は不足しているのかもしれません。

また、これはキャンプの地元選手の話ですが、黙っているとパスタやチャパティ、ウガリばかりを食べることが多いそうです。

(この辺りは食育が十分ではない可能性もあります)

 

更に、ケニア人のランナーは摂取するカロリーよりも消費カロリーの方が多い、すなわちネガティブエナジーバランスであることが指摘されています。

(参考:2008-12-17 - ひとり学融日記

実際に会ったケニア人選手の中にはかなり小食な選手もいて、あまりにも食べないので驚きました。

平均的にみても日本人と比べるとあまり食べる量は多くないように感じました。

理由の一つにそういう環境になかったのではないかと考えられます。

 

つまり、栄養事情は決して恵まれたものではないということです。

 

現在世界で活躍しているケニア人ランナーや、アフリカ系のランナーも大差ない環境で育ったと仮定すると、一つの仮説が考えられます。

 

それは”ある程度の貧食はランナーの成長にとってプラスに働く”という可能性です。

 

これは単に体重を落として軽くすればランナーにとって都合がいい、という話ではなく、その先にある話です。

 

少し視点をずらして日本の食事情から考えましょう。

 

日本の場合、子供の頃から3食きっちり食べることがここ半世紀ほどは当たり前で栄養状況は非常に恵まれていると言えます。

むしろ栄養の過剰摂取気味という状況にあります。

(参考:栄養面から見た日本的特質:農林水産省

 

そんな中で運動するというのはどういった影響があるでしょうか。

 

一つ目に効率を考えなくてよいということが挙げられます。

 

トレーニングが終わったら必ず腹一杯、栄養豊富な食事をとることが出来るので、そのような環境条件で運動することは例え長距離走であっても効率が優先されにくいです。

そのため、がむしゃらで非効率的な運動パターンが身につきやすいでしょう。

一言で表すと「効率が悪いフォームになりやすい」と考えられるのです。

 

二つ目は身体の過剰な発達が促されやすいかもしれないということです。

 

栄養が過剰に体に供給されるということは本来優先されない四肢の末端の部位も運動の刺激により筋肉や脂肪が発達しやすくなる、つまり無駄に筋肉がつきやすいのではないかということです。

ケニア人に比べて、日本人のランナーのふくらはぎが太い理由の一つかもしれません。

 

筋肉の発達というのは場合によっては意外と厄介なものです。

一度ついた筋肉は運動を継続している限り落ちたりしません。

筋肉を落とすためには運動を長期間減らすorやめるか、断食に近い食事制限により意図的に壊すしかありません。

ランナーにとっては余計な筋肉は重りでしかなく、また効率が悪くなりますね。

 

日本人の状況に比較してケニア人の場合は少ない食事量の中で高いパフォーマンスが要求されるため、動きも効率的になりやすく、かつ体も無駄のないものになるのではないかということです。

 

ただし、この仮説には重大な欠陥がいくつかあります。

 

まず仮説自体が生存者バイアスである可能性があります。

 

ケニアの食事情では洒落でもなんでもなく、栄養失調に陥りやすく、時には命に関わることがあります。

(参考:ケニア/干ばつ:深刻な食糧不足と栄養危機 37万人の子どもが急性栄養不良

ケニアの食生活環境下でトレーニングすることはかなりリスクが高いのですが、その厳しい環境で生き延びるほど強いポテンシャルを持っていたから世界で活躍できただけかもしれないという話です。

もしデニス・キメットが子供の時から日本で適度な食事と、同等のトレーニングをした場合、マラソンの世界記録はもっと伸びていたかもしれません。

 

また、人は個人によって食事との相性が存在します。

食べ物によってアレルギーになってしまうレベルから、吸収しやすい・しにくい、好き嫌いまで人それぞれ個体差があります。

 

これは食事の相性や好き嫌いなど個体差の多様性があった方が人間という生物が環境の変化(=摂取可能な食物の変化)に対応して生存しやすいからです。

全人類が米しか食べれない生物だった場合に米がなくなった絶滅してしまうので、その危険性を種として回避しているのです。

 

そのためケニアの食事情では栄養の吸収能力が弱い個人はもちろん、肉や魚と相性の良い個人にとっても不利になります。

 

だから決して安易にケニアの食事情に倣って食生活を変えようとはしないでください。

今回の仮説はデメリットも大きく、下手に取り入れることはおすすめできません。

 

あくまで一つの仮説としてもしかしたらある程度の貧食はランナーの成長にとってプラスに働く、かもしれないと頭の片隅にでも留めていただけると幸いです。

 

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ケニア人の骨盤前傾の秘密はハムストリングスにある?

当ブログではケニア人と日本人を比較して、その相違点からランニングについて考えた記事を度々書いておりますが(ケニア カテゴリーの記事一覧 - ランニング言いたい放題)、今回はケニア人の生活で身につくある特殊能力から考えたことをまとめたいと思います。

 

まずケニア人でプロのランナーになる人がどういう人達かというところから始めます。

 

ケニアは日本と比べると発展途上国であり、そのせいか若者の失業率も高いです。

国際労働機関(ILO)で算出された15~24才の失業率でみるとケニアは17%、日本は7.9%となっています。

(2012年、世界・若者の失業率(ILO基準)ランキング - 世界ランキング

特にケニアの農村部の失業率はかなり深刻だそうで、私が滞在したニャフルルでも市街地で昼間からぶらぶらしている失業者らしき若者も多かったです。

 

ケニアでランナーを目指すのはそういう農村部の若者です。

現在、世界でトップクラスのケニア人ランナー、もしくはアフリカ系のランナーも幼少時代は農村部で決して豊かではない生活をしていた選手がほとんどです。

 

アフリカ系のランナーで有名な2世選手は聞いたことがありません。

それは親が成功すると子供は高等教育を受けて普通に就職できるからだとか、そもそも親のお金で十分生活できるので走る必要がなくなるからです。

 

若者の失業率の高さはケニアにとって大きな問題ではありますが、それはここでは取り上げません。

 

つまりケニア人のランナーはほとんどが農家の若者だということです。

 

農家というのは肉体労働者なので、彼らは走るのが速いだけでなく、重いものは担ぐし、マッチの火は指で消すし、とにかく頑丈です。

そんな彼らは学校であることを教わるそうです。

 

それは「腰のかがめ方」です。

ケニアの地方の学校は農家の子供がほとんどなので、恐らくこういうことを習うのでしょう。

その作業姿勢がこちらです。

f:id:akttsugou:20180806185857p:plain

(引用:Kenya: No jobs in the city, so tech-savvy youth head back to the farm (Trust)

 

膝はほとんど伸び、腰をあまり曲げずに作業します。

 

これが日本人の場合だと下の様になりがちです。

f:id:akttsugou:20180806185621j:plain

(引用:ケニア人の作業姿勢: 月輪のブログ

 

腰の部分、背骨の腰椎がかなり強く湾曲しています。

そして骨盤は後傾気味です。

 

ケニア人と日本人の作業姿勢の違いは実は骨盤とハムストリングス(大腿裏側の筋肉)にあります。

 

ほとんどの日本人はハムストが硬いため、骨盤が前傾できず、その分を腰椎を湾曲させることによって前かがみの姿勢を取ります。

これが原因となって腰痛になる人も多いでしょう。

 

一方、ケニア人はハムストの動的柔軟性が高いので、ハムストで上半身を支えることができます。

そのため腰を曲げる必要が無く、骨盤から前傾することが出来るのです。

これは単にハムストが「柔らかい」ということではなく、伸び縮みをちゃんとコントロール出来て、かつ上半身をある程度支えられる力があるからこそできる姿勢です。

 

日本人のハムストが「硬い=使えていない」ということが推測できます。

 

これはランニングの時にも関係してくると考えています。

ハムストが硬い場合は骨盤前傾は出来ないため、ランニングの際もケニア人のような骨盤前傾を含んだランニングフォームは出来ないでしょう。

ランニングフォームは様々な要素・要件があって実現されているので、一つでも要素を満たさないと違うものになってしまうでしょう。

 

また、骨盤前傾が出来ていないということはハムストが十分に伸びず、その能力が十分に発揮されていない可能性が高いです。

一つ一つの筋肉は縮む方向にしか力を出せない”部品”です。

その筋肉が十分に伸びないということは力を発揮しにくいということになります。

 

ハムストが硬いことによるメリットはあまり考えられないので、ハムストの動的柔軟性はある程度高い方がいいでしょう。

 

そしてこれは日本人にはできない、というわけではありません。

 

ケニア人の作業姿勢: 月輪のブログ』の記事ではこう書かれています。

それぞれ作業の内容も違うので一概に比較できませんが、ケニア・マサイ族の腰の使い方は彼らの専売ではないようです。

(中略)

腰の使い方は学習された文化だとは思われますが、前掲写真を比較してみるとアフリカ系の人たちの股関節の曲がり方は見事ですので、体型体質の遺伝的要素も無視できないのかもしれません(生活習慣全般の問題かもしれませんが)。

ケニア・アフリカ系の民族の遺伝的要素は確かにあると思いますが、決して彼らだけにしかできないわけでなく、世界中の民族で多数見られる姿勢ということです。

(詳しくは参照元をご覧ください)

 

実際に日本人で腰を曲げずに骨盤・上半身を前傾させることができる人は存在します。

特にダンス経験のある方には多いようです。

 

ケニア人もダンスは達者ですし、やはりダンスはランニングにおいて有効である可能性が高いのかもしれません。

 

ハムストを動的に使えるようになるためのトレーニングは調べればいろいろとありますので、是非挑戦してみてはいかがでしょうか。

 

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ランニングにおけるリラックス②~ケニア人の動きの中のリラックス~

前回の記事(ランニングにおけるリラックスと、リラックスする具体的な方法)でランニングの際のリラックスについて一応の定義づけと走るときのリラックスについて触れましたが、その続編にあたります。

 

前の記事ではランニングのリラックスについてかなり簡略化して筋肉だけを見て話を進めましたが、それを更に深堀していきたいと思います。

 

走るときの筋肉の動きをかなり簡略して、前進するときに使う筋肉群と止まるときに使う筋肉群の差によって前進すると考えるえましたが、運動の際にもう一つ外してはならない要素が肉体には存在します。

 

それは『腱』です。

腱とは筋肉が骨に付着する部分にある、筋肉と骨を結合させている繊維です。

きわめて強靭で弾力性の高い繊維なので、簡単に超強力ゴムバンドみたいなものだと思ってください。

(参考リンク:腱 - Wikipedia

 

アキレス腱なんかはわかりやすいと思うのですが、走ったりジャンプしたりするときに伸び縮みして運動エネルギーに変わります。

腱は筋肉の両端についているものなので、人間は全身ゴムバンドでくるまれているようなものです。

ただし、普通のゴムと違い筋肉によって自在に伸び縮み、ゴムでいう弾性の強弱がコントロールできます。

なのでスムーズに運動することが出来るのです。

(本当に全身強力なゴムバンドでくるまれていたら全く動けなくなるでしょう)

 

筋肉の部分で伸び縮みの強弱をコントロールできるという点が今回のポイントです。

 

前回、姿勢を維持しているときに前後方向だけを考えて、前側と後ろ側の筋肉が強く働いて釣り合ってしまっていると、動くときもアクセルとブレーキを同時に踏んでいるように無駄が多いと書きました。

実際その通りなのですが、それに腱の要素も加えて考えていきます。

 

下の図を見てください。

f:id:akttsugou:20180728200520j:plain

簡単に腕の運動を模した図です。

丸い部分が肘で上の方が上腕、先の方が前腕です。

オレンジ色が腱と筋肉です。

腕をゆっくり曲げ伸ばしするときは単純に筋肉が伸びたり縮んだりするだけです。

 

曲げ伸ばしを速くやるときが腱が関わってきます。

 

肘を曲げた状態(A)から肘を伸ばし切った状態(C)にした後すぐにまた肘を曲げた状態(A)に戻すことを考えます。(A→B→C→B→A)

 

肘を素早く伸ばすときは筋肉が脱力しますが、曲げた状態と伸ばした状態の中間(B)に筋肉に少し力が入れて縮む方向に働くと、その分腱が多少伸びはじめます。

そして肘を伸ばし切った状態(C)になったときは腱も伸ばされています。

ちょうどゴムを伸ばした状態と同じで、腱は強力に縮もうとします。

同時に筋肉も力が入り縮むので相乗効果により一瞬で肘を曲げた状態(C→B→A)に戻ることができるのです。

 

これは肘の曲げ伸ばしのスピードが速く、ある程度の反動が腱にかからないと腱は働きません。

そして、筋肉の働くタイミングもずれてしまうと速く、スムーズに動くことは出来ません。

 

もし、肘を曲げた状態(A)から動き始めてすぐに筋肉を働かせてしまうと肘を伸ばし切る(C)前に止まってしまうでしょう。

逆に筋肉に力を入れるタイミングが遅いと肘を伸ばし切った状態で腱が働かず、素早く帰ってくることが出来ないでしょう。

 

また、腱の伸び縮みのエネルギーを利用せず筋肉だけで素早く肘の曲げ伸ばしすることも可能ですが、その場合は肘を曲げて伸ばして曲げる、の一連の動作の間中筋肉が働いていなければならず、非常に効率が悪いです。

腱を利用することのもう一つのメリットが腱自体は伸び縮みしてもエネルギーを消費しないことです。

 

つまり腱の特性とその働きも含めてタイミングよく絶妙に筋肉を働かせることが素早く効率的な動作につながるということです。

 

これが動きの中におけるリラックスです。

腱も上手く使うことによって力はいれているように見えないのに素早く動くことが出来、結果効率も良いというものです。

 

これを普段の動作の中で非常によくできているのがケニア人です。

 

彼らは日常的にダンスをしていることからリズム感だとかタイミングを上手くつかむことが得意です。

彼らのダンスでやる動きは力が入っているようには見えないのに、リズミカルかつ変則的・アクロバティックでまるで体がゴムまりの様に跳ねるので、日本人にはなかなかマネできません。

また肉体労働が多いこと、高地で道が悪く食糧事情も決して良くないことから、体中の腱を上手く使って効率よく動けないと生きていけなかったからとも考えられます。

 

ケニアに滞在していた時に水道が切れ(よくあることです)、水をタンクから直接汲まないといけなかったことがありましたが、彼らは私より細い手足で重いバケツを素早く、軽々と持ち上げてました。

今思えば肉体労働に慣れているだけでなく、腱の使い方が日本人とは比較にならないほど上手いのでしょう。

いや、日本人も食料事情の良くなかった昔の肉体労働者は出来ていたのかもしれません。

 

ケニア人は腱が強いということで知られていますが、これは日常的にそのような動きをしているから腱が発達したのだと推測できます。

腱の発達には運動が必要とのデータもあるので、日本人でもそのようにトレーニングを行えば再現は出来ると思います。

(参考リンク:腱の発達には運動が必要だと解明 遺伝子レベルで解明

 

これはジムでよくやる重りを単純に持ち上げるトレーニングではなかなか鍛えられない感覚です。

どちらかというとダンスのようなリズムと瞬発力が求められる動作やボックスジャンプのようなプライオメトリクストレーニングによって鍛えられるのではないかと考えられます。


腱が伸びたり縮んだりする感覚は恐らく一般的な日本人の生活ではあまり使わないので、初めはわからないと思いますが、この感覚を覚えることはランニングに決してマイナスではないと思います。

 

興味を持たれましたら一度チャレンジしてみてはいかがでしょうか。

 

ランニングにおけるリラックスと、リラックスする具体的な方法

ランニングに限らず、スポーツの場では「リラックス」という言葉が良く使われます。

そして誰もがリラックスすることは大事だと認識されていると思いますが、実際にリラックスは何を示すのか具体的に説明されることは少ないのではないでしょうか。

 

今回はスポーツの場で言われる「リラックス」について出来る限り詳しく考えてみたいと思います。

 

まずはリラックスの定義からですが、リラックスとは - コトバンクによると

 

デジタル大辞泉の解説

[名](スル)くつろぐこと。ゆったりした気分になること。「部屋着に着がえてリラックスする」

 

大辞林 第三版の解説

( 名 ) スル

精神や肉体の緊張をほぐしてゆったりとすること。くつろぐこと。 「 -して試合に臨む」

 
とあります。
一言で表すなら「ゆったりする」「くつろぐ」が近いでしょうか。
 
ただ、激しい動きをするスポーツの中で「リラックス」という言葉は「ゆったりする」「くつろぐ」というよりも「余計な力を抜く」という意味で使われていることが多いと思います。
要するに「速く、大きく動く中でもゆったりする」=「余計な・無駄な力を抜く」といった意味になります。
 
この「余計な・無駄な力を抜く」というのが「リラックス」として進めていきます。
 
まず単に「力を抜く」との違いからです。
人は厳密な意味で完全に「力を抜く」ことはまずできません。
 
ただ座っているだけでもほぼ無意識のうちに脳や神経が全身の筋肉に対して、常に無数の命令を発しています。
その為に人は黙って座っていられるのです。
 
もし脳が事故や病気などで傷ついてしまい、無意識化で姿勢制御の命令を出せなくなると、体中の筋肉には異常が無いにもかかわらず、ふらついてまっすぐ歩けなかったり、背もたれの無い椅子に座り続けることが出来なくなったりします。
 
そして単に座っていたり、或いは立っていたりするだけでも、個人によってその中身はだいぶ違ったりもします。
 
人が姿勢を保つ仕組みはちょうど天秤に似ています。
血液の循環や運動により絶えず揺れている体を釣り合わせるように、体中にある筋肉が働いたり休んだりします。
例えば前後方向だけを考えると、前側と後ろ側の筋肉がちょうど同じくらい働くと
バランスが取れることになります。
前と後ろが同じだけ働けばバランスが取れるということは、どれだけ力が入っていても前後同じであれば釣り合うということです。
 
これが天秤と同じところですね。
左右に載せている錘が1gずつでも100kgずつでも天秤は釣り合います。
これが個人差のある所で、より少ない力で釣り合っている人がリラックスできていることになります。
(下の図でいうとBよりもAの方がリラックスしていることになります)f:id:akttsugou:20180718223248j:plain
人が姿勢を保つには大きな力は必ずしも必要ありませんが、人によってはかなり無駄に力を使っている方もいます。
しかも、これはほとんどの場合無意識で行われているため、本人が自発的に自覚することは非常に困難です。
更に、これが走るときになるとより複雑で厄介なことになります。
 
走るときの筋肉の動きをかなり簡略して、前進する筋肉群と止まる筋肉群の差によって前進すると考えると 
前進する筋肉群のエネルギー量 - 止まる筋肉群のエネルギー量
 = 前方への推進力(スピード)
となるでしょう。
例え同じスピードであっても前進する筋肉群も止まる筋肉群も大きく働いている人はそうでない人よりも効率が悪くなるであろうことは容易に想像できると思います。 
 
姿勢を維持する時ですら力が入りすぎている人は、走るときもより無駄に力を使っている可能性が高いです。
一見すると同じように走っていても中身はまるで別物で、力の入りすぎている人はアクセルとブレーキを同時に使っているようなものなので、そうでない人に比べるとスピードや効率の面で大きく劣ってしまいます。
 
力が入っているかそうでないかを判別するのは姿勢維持の時と同じく、難しいものですが、例えば足音が大きかったり、動き全体がカクカクしていたり、走っているだけなのに筋肉がつきやすかったりする方は「リラックス」が出来ていない可能性が高いでしょう。
 
最後にランニングにおいてリラックスするためにはどうしたらいいか、有用と思われる方法を一つだけ提示して終わりたいと思います。
 
その方法は「ベアフットランニング」です。
 
理由を説明します。
 
まず裸足で走るときは大きな力で地面を蹴ることができません。
何故なら現代の日本人の足裏はかなり退化しており、それほど強靭ではないため、普段クッション付きのランニングシューズでやっている前進する筋肉群と止まる筋肉群のエネルギーの総和が大きいような動きは、力が強すぎて痛いので出来ないと思います。
ベアフットランニングを続けていると無意識的に痛みを避けようとして無駄な力を使わない動きに変わってくると考えられます。
 
また前進する筋肉群と止まる筋肉群のエネルギーの総和が少なく、かつ差が大きいとベアフットランニングでもランニングシューズを使っているときのようなスピードを出せるようになってくると思われます。
 
つまりベアフットランニングで、ある程度の距離・スピードで痛みを感じずに走れるようになるということは、無駄な力が少なく、リラックスした走りができていると考えられます。
 
ただし、いきなりベアフットランニングを取り入れることはリスクが高いので、導入は慎重に行ってほしいです。
 
以上がランニングにおけるリラックスと、リラックスする具体的な方法でした。
お付き合いいただきありがとうございました。
 

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ベアフット系シューズまとめて勝手にレビュー

ベアフットランニングというと知らない方はハードルが高いだとか、痛そうだとか良く伺いますが、そんなに高度なものではありません。

また、いきなり裸足でやらなくても巷にはベアフット系シューズなるものもあります。

ベアフット系シューズであっても裸足に近いものが多いので、十分にベアフットランニングを体験することが可能です。

私も普段の練習ではベアフット系シューズを結構使っています。

 

今回はベアフット系シューズの個人的なレビューを書いていきたいと思いますので、ご参考にしていただければと思います。
※寡聞にして独断と偏見が入っていますので、どうかご了承ください。

 

 

・ワラーチ

 

大ベストセラーである「BONE TO RUN」に出てくるタラウマラ族、ララムリが使っていることで有名になったベアフット系シューズの先駆け的なアイテムです。

(引用:sports traveling メキシコ コッパー・キャニオン #02 ララムリと出会う | onyourmark MAG

 

一見普通のサンダルですが紐できっちり踵までカバーしているため、走るときに浮いたりはしません。

ソールと紐のみで作られているため非常にシンプルで、足が解放されている感じを味わえます。

特に夏場におススメなシューズです。

ただし、ベアフット系シューズなので基本的に普通のシューズのようなサポートはほとんどなく、自分の体を上手く使わないといけません。

 

市販されているものでは「ルナサンダル」(LOTUS on the web / LUNA SANDALS(ルナサンダル))がありますが、私の周りのベアフットランナーは手作りがほとんどです。

 

Vibramソールと紐と簡単な工具があればできてしまうので、お手軽さでは群を抜いているでしょう。

なんでしたら使わなくなったビーチサンダルの鼻緒を取って紐を通せば出来てしまいます。(ズボラな私はこのタイプを作ったことがあります)

 

また、手作りの場合はオーダーメイドシューズの様に自分の足の形に合わせて作ることができます。

足の形そっくりなものや、わざと足の指を出したもの、人工芝や滑り止めシートを貼ったものなど、いろいろと工夫できます。

紐やソールを工夫すればカジュアルに使えるお洒落サンダルに変身するので、何足も自作している方もいらっしゃいます。

 

いきなり一人で作るのが不安な方は、ワラーチのワークショップに参加するといいでしょう。

色んな方が各地で開催されているので興味のある方は調べてみてはいかがでしょうか。

 

なお寒い冬は使うのは難しいでしょう。

(冬でも関係なく使われている猛者もおりますが…)

あと手作りが得意でない方はとっつきにくいかもしれません。

 

 

・ランニング足袋「KINEYA MUTEKI

 

ドラマの陸王で一躍有名になったランニング用に作られた足袋型の、日本オリジナルのベアフット系シューズです。

kineyatabi.co.jp

 

ベアフット系シューズなだけあって、非常に薄くて軽いです。

ソールの厚さは5mmの天然ゴムで普通のシューズのようなクッションやインソールはもちろん入ってません。

反発力も皆無で、まさに自身の身体能力と運動能力が問われるベアフットシューズです。

走り方が荒いとその分体に反動が返ってきますので、慣れないうちに無理は禁物ですが、慣れればフルマラソンも完走できます。

 

足袋の形をしているので、日本人にとって馴染み深いかもしれません。

私も始めて履いた時、足入れ感はかなり自然に感じました。

また普通のスニーカーと同じように紐でフィット感を調節できます。

 

ソールは薄くてフラットに作られているため一見滑りそうに見えますが、ベアフット系シューズ特有のソールの柔軟性により、地面の形に合わせて変化するので接する面積が広く、思った以上に滑りません。

MUTEKIでトレイルランをしたことがありますが、下りでもそれほど滑ることはありませんでした。
(流石に水にぬれた岩の上などは滑りましたが…)

 

履くときは足袋靴下や五本指の靴下、または裸足で使えます。

お値段も5000円(税別)とお手頃です。

ただし、ドラマの影響で品薄が続いており、手に入れるのは難しかったりしますが。。

私はMUTEKIを2足持っていました。

結構気に入っておりましたが、1足目は使用による引退、2足目はトラブルでケニアに置いてきてしまいました。

是非ともまた普通に買えるようにきねや足袋さんには期待せざるをえません。

 

 

・Vibram Five Fingers

 

言わずと知れた(?)元祖ベアフット系シューズです。

私が現在公私ともにお世話になっているシューズでもあります。

f:id:akttsugou:20180711230040j:plain

ソールが薄く、クッションや反発力がほとんどないのは他のベアフット系シューズと一緒ですが、何よりその特徴は5本に分かれた指の部分です。

 

普通のシューズを履いていると5本の指が動かなくなってしまう人が多いですが、Vibram Five Fingersを履いていると徐々に指が動くようになってきて、その意味でもトレーニングになります。

指の可動性により、他のベアフット系シューズよりも足裏が複雑に動くことが可能で、より地面に合わせて変化します。

Vibram Five Fingersを使って運動するには他のベアフット系シューズ同様に、上手く体を使うことが求められます。

 

その他の特徴として多くのモデルラインナップがあります。

ランニング用だけでなく、登山、トレーニング、ウォータースポーツ、カジュアルなど、用途に合わせて様々なモデルから選べます。

 

値段は前の二つに比べると1万円以上からとなるので敷居は少し高いですが、その価値はあると思います。

 

現在私はトレーニングだけでなく普段の生活がほぼVibramFiveFingersを使っているので詳細はいくらでも書けますが、それはまた別の記事に書きたいと思います。

 

ベアフットシューズのレビューでしたが、いかがでしょうか。
興味のある方は是非お試しいただければ幸いです。

 

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大迫傑選手のフォームはケニア人に似ているのか?

今、日本トップクラスのランナーで、アメリカのオレゴンプロジェクトに所属している大迫傑選手のランニングフォームが、ケニア人とどれだけ似ているのか考えを述べたいと思います。

 

まず初めに一つだけ訴えたいことがあります。

大迫傑選手のレース中の動画が少なすぎることです。

 

これが世界トップクラスの選手なら色んなアングルから走っている姿を取った大会公式の動画が沢山あるのですが、大迫選手に限らず日本人選手の動画は日本選手権ですら観客席から一般の方が撮った1アングルの映像がほとんどで、ほぼ分析が難しいです。

 

きちんとフォームを分析するからには前や左右、後ろから動きを確認しないと私には難しいです。

(できれば腰の高さあたりからであれば言うことはありません)

 

世界レベルは見放題で日本人トップクラスは公式映像無しとは、日本陸上競技連盟に物申したいところです。

 

大迫選手の場合はかろうじてアメリカ?の映像らしきものがあったので、主にそちらを参考にしました。

若干のデータ不足感は歪めませんが、分析していきたいと思います。

 

大迫選手は元々の身体的特徴がケニア人に近いところがあります。

日本人平均より明らかに長い足と小さくて後頭部が出っ張った頭などがそれにあたります。

(参考:ダンスはケニア人に何を与えるか - ランニング言いたい放題

 

要するに元々フォームが似通りやすいと言えると思います。

 

ではランニングフォームも見ていきます。

www.youtube.com

 

先ほど書いたアメリカの2016年のOregon Relaysの動画と思われるものです。

 

走り方でも大迫選手はケニア人と似ている点がまず1つあります。

それは腕振りの肘の角度です。

前の記事(ケニア人は胸で腕を振る? - ランニング言いたい放題)でも触れたとおり、ケニア人は腕をたたんで腕を振ります。

これは体幹から動いて腕を振っていると自然になると考えています。

肘が開くと腕振り時のモーメントが大きくなり、その分反動も増えるので、体幹を固めないと体全体のバランスを崩してしまいます。

 

大迫選手は肘の角度がケニア人と非常に近い角度で、彼が体幹から動いて走っていることが予想できます。

(ただし、必ずしも肘の角度が閉じていれば体幹が動いているとは限りません)

 

また、動画を見た限りでは前傾姿勢気味であることやストライドの長さ、フォアフット走法であることも似ているでしょう。

実際に測定器具で測っているわけではないので断定は難しいですが。

 

ここまでは似ている部分を上げてみましたが、今度はそうでないところを見ていきましょう。

 

ケニア人の体幹の使い方を大雑把に絞ると以下の3つになります。

  1. 推進力
  2. 衝撃吸収
  3. 重心コントロール

このうちで大迫選手にほとんど見られないのは「3.重心コントロール」です。

これは体幹で重心を制御し、推進力を上手く速度に変換したり倒れないようにバランスをとったりする技術を指しますが、これがありません。

 

たとえば大迫選手の走りには”ルディシャの振り子”の動きが見られません。

体幹が脱力しつつ、左右のバランスをとる動作がないのです。

 

また、前傾姿勢もケニア人やアフリカ系の選手に比べると角度が浅いです。

(動画の7:00あたりを参照)

www.youtube.com

前傾がケニア人のような角度になっていない理由としては、背骨周りの脱力ができていないこと、体幹から主導して上手く推進力を活かせていないことが考えられます。

(こちらはまだ記事にまとめていないため、後ほど上げていきたいと思います)

 

そして脱力が出来ていないこと、及び体幹に軸が出来ており固定的なことから、衝撃吸収も出来ていない可能性があります。

体幹、背骨に沿って1本の軸が出来ている場合は体幹をバネの様に使うことは困難です。

 

先に書いた体幹で腕を振っている点についても、ケニア人は体幹のバネを縮める(衝撃吸収)ことにより弾性エネルギーを発揮していますが、大迫選手の場合はそうではなく、主に体幹の筋肉を使うことによってそのような動きを出しているのではないでしょうか。

 

まとめますと、体幹の筋肉を動かして推進力を生みだしていると予想は出来るが、ケニア人的な体幹をバネとして衝撃吸収と同時に弾性エネルギーによる推進は恐らくできておらず、また体幹による重心コントロールも見られない、といったところです。

 

ただ、平均的な日本人に比べると腕や下半身だけでなく、体幹部分も有効に使えているとも言えます。

日本トップレベルでは大迫選手ほど体幹を使えている選手は少ないと見受けられます。

 

ポテンシャルもおおよそ日本人離れしているので、もしかするとインターロックトレーニングをしたら体幹の使い方はすぐにケニア人的な動きが出来るのではないでしょうか。

ランニングフォームは選手自身の骨格や筋力、感覚、経験など様々な要素が複雑に絡み合って構成されているため、安易に変えるほうがいいとは言えませんが、大迫選手がルディシャのように動けたらとても面白いのではないかと考えてしまいます。

 

大迫選手のより詳細な身体データがあればより詳しく妄想できるのですが、今回はこんなところでしょうか。

 

長々とお付き合いいただきありがとうございます。

 

!次回予告!

「ベアフット系シューズまとめて勝手にレビュー(仮題)」

どうぞお楽しみに?

 

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