クロカンを走るケニア人の様に膝下の力を抜くということ その1
ケニア人ランナーはトラックやロードで圧倒的な強さを発揮しておりますが、それはクロカンでも例外ではありません。
私は2017年の夏にケニアのニャフルルで、身を持って体験しました。
今回は私のケニアでの体験を元に、私が考えるケニア人がクロカンでも強い要因の一つと、それを真似するためのトレーニングについて書いていきたいと思います。
別の記事ケニア人がフォアフット走法になる理由 でも書きましたが、ケニアはまだまだ不整地、クロスカントリーの環境が多いです。
道路の99%はアスファルトで舗装されていない、土と岩でできた凸凹道です。
そしてその脇は見渡す限り草原だったりすることも少なくありません。
その地面の上は比較的平らなところもありますが、ひどい道は拳大や頭ほどの大きさの石?岩?が並べられていて、車で走るとサスペンションが壊れるのではないかと思うくらいです。
そういう道をJOGしていた時の話です。
現地のケニア人ランナーと決して速くはないペースで走っていたのですが、そういう道に差し掛かると私は速度を維持できずに離れてしまうのです。
彼ら・彼女らはほとんど減速することなく、まるで地面からわずかに浮いているかの如く、スーッと走って行ってしまうのです。
私は離されないように必死にペースを上げようとするのですが、石に足を取られて思うように進めないのです。
岩が足にあたって痛いことと、足を取られてバランスを崩してしまうことが原因でした。
結果ペースを保つことは叶わず、なだらかな道に出てから追いつくことしかできませんでした。
この場合、問題なのはランニングの技術です。
ペース自体は速くなく、なだらかな道なら私はついていけていたので、明らかに私の技術不足で、ケニア人は何らかの技術を持っていることになります。
ケニア人は生活環境が基本不整地なので、そこで活動するように適応していると考えられます。
ケニアではまだまだ車を所持している人は多くないので、徒歩が移動手段のメインになりますが、歩き方からして日本人とは違うように見えます。
ケニア人ランナー達の歩き方はゆったりとしていてリラックスしており、なめらかで野生動物的な柔らかさがあり、それでいて歩くスピードは見た目ほど遅くはありませんでした。
その歩き方についていくだけでも少々骨でした。
何故このような違いがでるか、先に書いた通り要因はいろいろとありえますが、そのうちの一つに膝下の力が抜けていることがあると思います。
では何故膝下の力が抜けているとクロカンで走りやすいのでしょうか。
これはクロカンなど不整地を走っているときの膝下の動きに注目し、力が抜けているときとそうでない時を思考実験的に比較するとわかりやすいでしょう。
まずは走っているときに膝下の力が抜けていない場合で、足が地面に接地する直前に突起物があり、つま先が当たったしまうときを考えます。
膝下の力が抜けていないということは、ちょうど足が骨盤の付け根からつま先にかけて一本の棒のようになっていることと同じです。
なので、つま先が突起物にあたってしまうと足全体が止まってしまいますが、慣性の法則により骨盤から上の上半身は進み続けます。
よって上半身が前のめりに出てしまいバランスを崩します。
要するに躓いて足を取られ、転びそうになるということです。
では今度は膝下の力が抜けている場合で、上記と同条件で考えてみます。
膝下の力が抜けていると、膝は自由に曲がることができます。
この状態で、つま先が突起物にあたっても膝が曲がってくれるために膝から上は影響を受けにくく、そのまま進むことが出来ます。
イメージはのれんに腕押しですね。
つま先が当たっても膝から下が衝撃を逃がしてくれます。
また、このような動きが出来ることはクロカンだけでなく、ロードやトラックなどの平らな場所で走る際にも有効です。
膝下の力が抜けない人はクロカンだけでなく、平らなところを走っているときも同じ事をしています。
速い速度で走っているときは地面も同じ速度で足に向かってきますが、足が一本の棒となっている人は、足を動かす速さが地面の向かってくる速度を下回ると接地の瞬間に止まるのです。
つまり平らな地面の上でも”躓いて”いるのです。
平らな地面の上で加速もすぐに出来るためクロカンに比べて目立たないだけで、膝下の力が抜けているランナーと比べると効率では分が悪いです。
何せ一歩ごとに細かくブレーキを踏んでいるようなものです。
短時間ではわかりにくいものの、長距離になればその差は大きく現れてくるでしょう。
クロカンでも強いケニア人がトラックやロードでも無敵の強さを誇っているのもうなずける話です。
さて、この技術ですが私は日本人でも比較的簡単に取り入れられると考えています。
理由は2つあります。
まず1つ目は昔の日本人は確実に出来ていただろうという推測です。
昔の日本人とは草鞋や、場合によっては素足で生活していたころの日本人のことです。
そんなに昔の話ではありません。
下記参照リンクによりますと「1950年代中ごろから男性を中心に革靴を履くことが一般化」したそうです。
また、日本の道路も現在のような平らなアスファルトの舗装路が本格的に広まったのは1960年代後半のモータリゼーションからです。(「舗装」-Wikipedia)
この二つの事実から、これ以前の日本人は生活の移動をほぼ徒歩で行っていて、環境条件ではケニア人とほぼ同じであり、故に同じような技術を有していても不思議ではないと考えられます。
理由のもう1つは現代の日本のベアフットランナーです。
私の周りには多くのベアフットランナーがいますが、実はその中には明らかにこの技術を有しているランナーが複数存在します。
その彼ら・彼女らは日本の急こう配の多いトレイルを裸足で足裏をほぼ傷つけることなく、平地とあまり変わらぬ速度で走ることができています。
定期的に裸足で走っているからか元からそのような素質があるからか、一概には言えませんが、確実に言えることは膝下の力を抜けないランナーは足裏に衝撃が集中しやすく、凸凹だらけのトレイルを裸足で走ることは出来ないでしょう。
以上から、膝下の力を抜くのはケニア人の専売特許ではないことがわかるでしょう。
では今度はどうしたら膝下の力を抜くことができるのか、ですが…その話は長いので次回の記事に書きたいと思います。
お付き合いいただき、どうもありがとうございました。
次回「クロカンを走るケニア人のように膝下の力を抜くということ その2 実践編」
お楽しみに。
↓良ければ一押し頂きたいです。