上り坂を上手く走るたったひとつの走り方
ランナーの皆さん上り坂を見ると何を考えますか。
私はよほど疲れていない限り、上り坂走るのは好きです。
楽しくはありませんか?すごくきつい程追い詰められている感じがしてワクワクします。
階段はそこまで好きではないですが、上り坂はとても楽しいですね。
・・・。
あまり理解を得られなさそうな導入ですが、今回は上り坂を上手く走る方法について書いていきたいと思います。
題名では「たったひとつの走り方」なんて大げさ言っておりますが、本当にその通りでだと私は考えています。
もったいぶらずに言ってしまうと、上手く走る走り方とは『何もしない』です。
人から上り坂のコツを聞かれたときはいつもこう答えているのですが、皆さん一様に「?」といった表情をされます。
ちゃんと説明しますので、もしよければ見ていってください。
まず、この記事で言う上り坂とはロード或いは不整地で、階段のように段差になっていなく、角度が急すぎたりもしない坂のことです。
さて、先に結論を述べてしまいましたが、上り坂を走るとき私はあえて『何もしません』
言い換えると多くの方は上り坂になると普段はやらないことをやろうとするので、無理に疲れてしまうと私は考えています。
まずは「姿勢」です。
私は上り坂でも平地を走るときと同じように姿勢を変えません。
特別前傾にしたり、体幹を意識したりもしません。
姿勢を変えるとそれだけで疲れるからです。
普段平地で普通に走っている姿勢はフォームの良し悪しに関わらず、とにかくその人にとって現状一番無理のない自然な姿勢です。
平地での姿勢の方が力が出しやすく、疲れないのです。
それが坂になると特に前傾に持っていこうとするランナーが多いですが、それはただでさえ上る分消費を強いられる上り坂において、更に燃費を悪くするだけです。
変えた姿勢を維持するのにもエネルギーは必要ですし、無理な姿勢は力が出にくい分、余計に力を出さなくてはいけなくなります。
(これは私が日頃お世話になっているベアフットランニングの第一人者、吉野剛氏から学んだ事です)
そもそも前傾姿勢にしても上り坂は楽になりません。
物理学の基本に倣えば体重を変えない限り、同じ上り坂において上るのに必要なエネルギー総量は変わりません。
次は速度の問題です。
上り坂では平地の時のような水平方向への移動に加え、自分の体を高い場所へと運ぶ垂直方向への移動にもエネルギーが必要になってくるため、当然その分速度は低下します。
平地の時は直進だけに使っていたエネルギーが、上り坂では垂直方向へ体を持ち上げることにもエネルギーが必要になってくるということです。
なので、上り坂では速度を維持することははるかに難しいです。
坂を走る身体負荷と技術①ではグラフや表で坂道に必要なエネルギーについて説明していますが、こちらによると「10%の坂道のエネルギー消費量は平地の1.5倍!」だそうです。
そんな上り坂ですが、多くのランナーに見られるのが無意識に速度を維持しようと頑張ってしまうことです。
そうすると先の姿勢の話にも関係してきますが、無理に足を上げてストライドを広く取ろうとするので、余計に疲れます。
ただでさえ”5%の上り坂では平地よりも25%も余分にエネルギーを消費し、10%の傾斜になると50%にも達し”てしまう坂でそんなことをすると一気にエネルギーを消費してしまって、そのあとの足が止まります。
私は坂では速度を維持しようとはしません。
平地を走るときと同じリズム、同じエネルギー消費になるようにします。
結果的に減速しますが、平地や下り坂で取り返すことが出来るので問題ありません。
むしろ、上り坂でエネルギーを消費しすぎて失速するランナーを抜くことも少なくありません。
最後は力の出し方とも言えばいいでしょうか。
上り坂ではまた多くのランナーが良くやっているのですが、足を勢いよく地面に叩きつけているのです。
これはランナーでなくても日常の中で、階段を歩いているときにも見られます。
皆さんも見たことはないでしょうか。
上りの階段で足音が非常に大きくなる方を。
この現象は足が地面につく前から力んでいるために発生します。
しかしながら、これは全てエネルギーの無駄です。
人間は空を飛べません。
人間の足は地面についてからでしか仕事をすることが出来ません。
なので、いくら空中で足に力を入れたところで、地面に着いた瞬間にそのエネルギーは音と衝撃と熱にしか変換されません。
これはエネルギーの全損です。
私はここでも平地と同じように上り坂に足をつけるだけにします。
上り坂でも平地と同じように足を回して、坂の角度の分だけ平地より少し早く地面に着地します。
多少ストライドは縮みますが、エネルギーを全損するよりはるかに効率的です。
こうして平地と同じように上り坂でも『何もせずに』普通に走るだけで、少なくとも姿勢を変えたり、速度を維持しようとしたり、力出したりする人よりもずっと効率的に走れるでしょう。
ただし、これはある程度走って練習をしていて身体能力がある方がすると有効な方法です。
間違っても万有引力の法則に逆らって、体力脚力が無くても坂道をスイスイ走れる方法ではありませんので、あしからず。
↓良ければ一押し頂きたいです。