ランニング言いたい放題

日本ベアフットランニング協会公認コーチ、Vibram FiveFingers トータルアドバイザー。走るのが好きな人|裸足で走ったりケニアで走ったり|メインテーマは『ケニア人ランナーの動きの再現』です。お問合せ:hadashi.rc@gmail.com。by須合拓也

ケニア人がフォアフット走法でも足を痛めない理由 その2 ~吸収局面と加速局面~

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runner-takuya-sugo.hatenablog.com

こちらの記事の続きとなります。

 

前回、ケニア人がフォアフット走法でも足を痛めない理由について書きましたが、実はこれはまだ半分です。

この記事では残りのもう半分の要素を書いていきたいと思います。

 

 

ケニア人ランナーの走りを見ていると非常に軽やかです。

そして、物理的にも日本人より軽いのではないかと私は考えています。

体重身長が同じであれば、進むのに必要なエネルギーも本来は同じになるだろうと推測できるでしょうが、それでも日本人よりもケニア人の方が物理的に軽く進むことが出来るために、軽やかに見えるのです。

つまり、”質量は一緒でもケニア人の方が軽く進むことが出来る”という一見矛盾したようなことを言っているのですが、矛盾ではないことをきちんと説明していきたいと思います。

 

前の記事、ケニア人がフォアフット走法でも足を痛めない理由で書いた通り、ケニア人は前足部から接地していても全身を上手く使って衝撃を吸収しているので、足を痛めにくい、と書きました。

その時の姿勢は”椅子に座るときのように上半身を前に倒し、骨盤は前傾で、臀部やハムストが伸ばされて速度を調整する”という動きになります。

もう少し詳しくすると

上半身はリラックスして背骨の真ん中あたり(胸椎12番)から曲がるようにしてやや背中は丸くなり、かつ骨盤が前傾しているため、背中からお尻、裏腿、膝裏にかけて伸ばされた状態

となります。

 

つまり背中から膝裏までの長さの大きなゴムが伸びることによって衝撃を吸収しているともいえるわけです。

そしてゴムというのは伸ばされると弾性エネルギーが大きくなります。

 

ケニア人たちはこの弾性エネルギーを加速局面でタイミングよく開放して運動エネルギーに変えているために、日本人よりも軽々と進むことが出来ているのです。

 

さて、より詳しく説明していきます。

 

ランニングの際、足が地面に接地してから離れるまでの間を二つの局面に分けることが出来ます。

それは衝撃を吸収する局面と加速していく局面です。

 

まず地面に接地すると足に衝撃(荷重)がかかり始めます。

その衝撃は速度やその人の体重によって大きさは違いますが、接地してから急激に上がっていき、最大値に近くなると緩やかになる形となります。

その衝撃は最大で体重の2~3倍ほどです。

(なお、ベアフットランニングをしているランナーは2倍前後と低くなる傾向にあるそうです)

 

衝撃が最大値を過ぎると今度は急激に下がっていき、ゼロになると同時に足が地面から離れます。

 

私は便宜的に接地してから衝撃が最大値に達するまでを”吸収局面”、最大値からゼロになるまでを”加速局面”と分けています。

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※なお、シューズを使用している日本人ランナーはこのようななめらかな曲線にならないことが多いです。踵から接地するために吸収局面の途中でこぶのような山が一つつくような曲線となります。詳しくは【研究】裸足で走る技術をデータ化したのがこれ! | 吉野剛の裸足ランニング裸足ラン研究、やはり一般ランナーとは全く違う? | 吉野剛の裸足ランニングをご参照ください。

 

この図にそって説明すると吸収局面では衝撃を体幹を含め、体全体のゴムを伸ばすようにして衝撃を吸収しつつ弾性エネルギーを貯め、加速局面に入ったタイミングに合わせて背中から膝裏にかけて蓄えられた弾性エネルギーを開放し、更に筋力も加えて大きな運動エネルギーに変換して前に進んでいるということです。

 

これが日本人の場合だと、まず吸収局面は踵接地なために一度止まってしまい、かつその衝撃を下半身で受け止めがちです。

筋力を使って少し減速もしています。

前ももが疲れやすい、筋肉痛になりやすいのはそれが原因です。

 

加速局面でも下半身に頼りがちになります。

しかも減速した分も加速しなければいけないので、ケニア人の進み方に比べるとかなり足の筋力を使うことになります。

しかも重心はへそのあたりにあるにもかかわらず、重心より下の足で進むということはベクトルが上にずれやすく、そうならないように主にふくらはぎを使って微調整を強いられます。

日本人のふくらはぎが太くなるわけです。

だから重く見えますし、実際に足にかかる労力を見ると重いのです。

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上半身と下半身が連動してタイミングよく力を発揮できるケニア人は、下半身中心になりがちな日本人に比べると出力からして段違いで、仮に同じ身体条件・能力だったとしても上半身と下半身の両方でエネルギーを発揮できるケニア人のベクトルの大きさは日本人の単純に倍違うことになります。

(現実には日本人は下半身に頼る分下半身が発達してそれなりに推進力を出し、上半身と下半身の両方使うケニア人は下半身の推進力だけ見れば日本人より弱くなると推測しています)

 

しかも衝撃を弾性エネルギーに変え、その弾性エネルギーを運動エネルギーに変換するというすさまじい効率性も兼ね備えています。

 

まとめますとケニア人は吸収局面だけでなく加速局面においても足ばかりに頼っていないために負担が少なく足を痛めにくい、ということです。

 

今回は以上になります。

長々と仮説にお付き合いいただき、ありがとうございました。

 

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