ケニア人は踊るように走る
" 耳の聞こえない子たちが習ってもいないはずなのに複数人で踊り出すなど、予想もしていなかったからです。音楽の授業は一応ありましたが、先生が四分音符や八分音符を板書し生徒が先生の指示に従って何拍か鉛筆で机を叩くという座学で、普段の授業でダンスを教えることはありませんでした。"
~私たちは、いつも踊っている―ケニア、聾の子供の「ダンス」をめぐる人類学的研究― | ON-KEN SCOPE 音楽×研究~
2017年にケニア・ニャフルルの裸足ランニングキャンプ(http://hadashi-world.com/)に滞在していた時のことです。
キャンプには選手だけでなく、学校が長期休みということで10歳前後の子供もお試しで練習に参加していました。
それで日本から来た私たちの為に子供たちみんなが歓迎の創作ダンスを踊ってくれました。
アカペラで歌いながら、です。
ケニア人が速くて日本人が勝てない理由を探すのであれば、両者を比較してケニア人に当てはまって日本人にないことが原因と考えられるはずです。
それは高地に住んでいることでしょうか。
私が陸上を始めた小学生の頃には既に高地トレーニングが行われており、あの高橋尚子もボルダーでトレーニングを積んでいたというから、有意差の要因とは言い切れないでしょう。
高地トレーニングは疲労がたまりやすい、練習で追い込みにくい=スピード練習に向かないというデメリットも存在します。
なので、スピード練習は標高の低いところで行う選手もいます。
(高地トレーニングとは。期待できる効果は? | POWER PRODUCTION MAGAZINE(パワープロダクションマガジン))
ケニア人は生まれた時から住んでいるから多少有利に働くとは思いますが。
では裸足で生活していることでしょうか。
前の記事(ケニア人はもう裸足で走ってない - ランニング言いたい放題)にも書いた通り、今の選手は10人が10人とも「裸足はありえない」と答えるぐらいです。
現在マラソンで活躍しているトップクラスのケニア人の上の世代であれば裸足で育っているようですが、裸足がケニアから見なくなって久しいようですので、これも要因たりえません。
あるいは経済的に発展途上国だからでしょうか。
これは要素として十分考えられます。
ハングリー精神です。
また、ケニアではランナーが職業として確立しており、社会において現実的な選択肢であることもプラスといえるでしょう。
ただし、これは二つほど問題点があります。
一つは社会環境的要因がどれほどスポーツに影響をもたらすのか測りにくいことです。
経済状況によってはそもそもスポーツできないことも当然ありえますし、経済的に恵まれている方がメダリストになる可能性が高いという記事もあります。(子どものスポーツにも経済格差が? | 関東学院大学国際文化学部)
二つ目は再現性に乏しい、つまり日本人はケニアに移住しケニア社会に同化しない限りこの要因をまねできないということです。
ならば練習メニューでしょうか。
これも違うと考えられます。
ケニアでやっている練習内容は日本でもできますし、逆も同じです。
練習のレベルが違うと思うかもしれませんが、それは実力が違うからで、同じ練習をすれば強くなるというわけではありません。
では何を要因として考えるかというと…ダンスです。
冒頭で散々書いた通りケニア人は子供から大人まで、たとえ耳の不自由な人であっても、それこそ誰でもダンスが出来ます。
誰でもです。
ケニアに限らずアフリカ系の文化には必ずダンスの存在があります。
しかもこれはバレエなどとは異なる体の使い方をします。
アフリカ系文化特有の体幹をしならせてリズムに乗って踊るダンスです。
アフリカをルーツに持ち、その文化を継承しているアフリカ系の方たちはリズムに乗ってしなやかに踊ることが可能です。
子どものころから踊ることが当たり前な彼らは体幹の使い方が絶妙で、非アフリカ系の人にはなかなかマネできない動きが可能です。
逆に日本人は日本舞踊や盆踊りを見てみればわかる通り体幹を固定して手足を使う、リズムの無い踊りが文化としてあります。
これはもう文化の違いなので良い悪いではありません。
身体能力におけるケニア人の、またはアフリカ系の文化が及ぼす影響がたまたまランニングに向いたものだっただけです。
逆にアフリカ系の人は盆踊りが出来ないそうです。
音楽にリズムがないからできないとのことです。
ただダンスが要因であれば話は早いです。
日本人もケニア人のようなダンスを練習すればいいのです。
子どものころからやっているケニア人とはどうしても差が出るでしょうが、絶望的ともいえる差をいくらか縮めることが出来るのではないかと考えています。
そして、才能ある日本人がケニア人と同じくらいダンスが出来る=体幹が使えるようになれば、もしかしたらケニア人といい勝負ができるかもしれません。
ケニア人だろうが日本人だろうが大元は同じホモ・サピエンス、同じ要因を取り入れれば同じ結果が出せることは間違いないでしょう。
ダンスが出来るとどのような影響があるのかはまた別の機会に書きたいと思います。
参考リンクまとめ
私たちは、いつも踊っている―ケニア、聾の子供の「ダンス」をめぐる人類学的研究― | ON-KEN SCOPE 音楽×研究
(ケニア文化の研究、聾学校の子供たちが踊ることについて記載あり)
高地トレーニングとは。期待できる効果は? | POWER PRODUCTION MAGAZINE(パワープロダクションマガジン)
(高地トレーニングについて”スピード練習を行う場合は、標高1500~1600mに滞在”と記載あり)
子どものスポーツにも経済格差が? | 関東学院大学国際文化学部
(スポーツの経済格差について記載あり)