ランニング言いたい放題

日本ベアフットランニング協会公認コーチ、Vibram FiveFingers トータルアドバイザー。走るのが好きな人|裸足で走ったりケニアで走ったり|メインテーマは『ケニア人ランナーの動きの再現』です。お問合せ:hadashi.rc@gmail.com。by須合拓也

誰にでも共通するランニングの技術とは何か

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皆さん日頃は何を目標にランニングをされているでしょうか。

 

サブスリーでしょうか。

或いはサブフォーでしょうか。

 

ウルトラマラソン完走でしょうか。

UTMFやハセツネを制覇することでしょうか。

それとも痩せたり、健康的になるためでしょうか。

 

この記事はすべてのランナーに共通するランニングの技術について考えたものです。

 

突然ですが、サブスリーという目標を達成するのは大変だと思いますか。

フルマラソンを3時間以内で完走するという目標です。

1キロ当たりのペースで言えば4分と少しといったところでしょうか。

市民ランナーであれば良く話題になる目標で、同時にあこがれの的でもあります。

 

先に答えを上げてしまうと条件さえそろえば非常に簡単です。

ある程度の身体能力を有している人が、とりあえず一定量の練習すれば達成できます。

特別な技術は全く必要ありません。

 

もう少し具体的に書きましょう。

身体能力の成長率は成長期を過ぎるとどんどん鈍化していきます。

なので、成長期の運動レベルである程度決まってきます。

学生で月間600kmほどのネットにありふれた練習メニューを走れていれば、ランニングについて技術がなくても、マラソンについて工夫しなくても、楽に3時間以内で完走することが可能です。

 

ただし、これには大きな代償を伴う場合があります。

腱鞘炎、骨膜炎、筋膜炎、肉離れ、坐骨神経痛椎間板ヘルニア疲労骨折、オスグット、鉄欠乏性貧血、膝蓋骨軟化症…。

上に列挙しているのは私が学生の頃に経験した、あるいは周りの人が負ったケガです。

よくもまあ、ただ走るだけでこれだけのケガをするものだと思いませんか。

ケガが癖になって一目見てわかるほど足が曲がってしまった人は1人2人ではありませんでした。

 

私は、幸いながら走れなくなるような大きな後遺症はありませんが、それはただ単に運が良かっただけです。

先ほど「月間600km~走れていれば」と書いた通り、もちろん練習が出来ず、あまり成長できなかった選手も山ほどいます。

 

なので、むやみやたらにサブスリーだとかウルトラマラソン挑戦だとかそういう目標を立てて、自身の身体能力を度外視して単に練習を積むだけのランニングはお勧めできないです。

 

市民ランナーにおいては、そもそも潜在的な身体能力は大きく成長しません。

体の回復能力も成長期に比べると落ちています。

速く走るために、長く走るために、といった目標を立ててランニングの技術を磨かずに練習することは非常にリスクが高くなることがあります。

 

ではランナーが身に着けたいランニングの技術とは一体何でしょうか。

 

それは自身の限界を正確に把握すること、自身を効率的にコントロールすることだと考えます。

 

例えば5キロ走るときでわかりやすく書いてみます。

 

ランナーにとって5キロは決して長くありません。

速い人の中にはあまり疲れることなく20分以内で走れる人もいるでしょう。

 

では5キロを息も切らさず、汗もかかず、走った前と後で疲労度合がほとんど変わることなく走ることはできるでしょうか。

 

これこそ最も基礎的にして最も難しいランニングの技術だと思います。

 

ランニング初心者だと初めての5キロは走り切ることも難しい人もいるでしょう。

それでも練習を続けていればやがて楽に5キロを走ることが出来るようになってきます。

これは筋肉がついてきたり心肺機能が向上したりすることと、同時に走るという経験を通して自分の限界やペース配分を知るからです。

 

5キロ走ることがつらいランニング初心者のAさんの体力を100としましょう。

何か月か練習して5キロを楽に走れるようになったAさんの体力はどのくらい成長しているでしょうか。

いくら身体能力が上がったからと言って200や300になるわけではないでしょう。

感覚的には120とかそのぐらいではないでしょうか。

それよりもペース配分や体の動かし方を覚えることによって5キロ走るのに必要な体力が100から50に下がったとは考えられないでしょうか。

 

これは何も初心者だけに有効な考え方ではありません。

トップレベルの選手であろうが、何年も走っている市民ランナーであろうが、身体能力は既に頭打ちになっている場合が多いです。

練習を始めた当初は上がりやすいものの、練習を重ねえるごとにその上昇率は下がり続けます。

また練習を増やすことはケガというリスクに遭遇する可能性を高めるので、練習の量と質を上げるだけでは早々に限界を迎えるでしょう。

 

そこで重要になってくるのが技術です。

ペース配分もそうですが、楽に走れるようにフォームや体の使い方を模索し、調整することが、その人のランニングに良い影響をもたらすと思われます。

また、そうして自分を体をうまくコントロールできるようになると、走ること自体が非常に楽しくなってきます。

 

技術はただ単に走っているだけでは身につくとは限りません。

また速い人=技術をもっているとも限りません。

練習しなきゃ速く走れない人は身体能力に頼っているので、むしろ技術を持っていないとも考えられます。

私自身も学生の頃は速さを求めるあまり自分の肉体や精神を無視してひたすら練習に明け暮れていましたが、技術なんてものは全くなかったと断言できます。

それでも全国大会出れますし、5000m14分台は出せました。

色んな部分がボロボロでしたが。

 

この記事は何より私自身に対する自戒です。

本当の走る技術を持っている人は走る練習をガンガンしなくても走れるはずです。

 

私がケニア人の動きを分析してトレーニングを考えたり、ベアフットランニングを取り入れたりしているのも速くなるためではありません。

 

そういった技術を磨くことで、より楽に、楽しく、華麗に走れるようになることこそが本懐です。

 

速さはそのおまけです。

 

ランニングブームやオリンピックが近いこともあるからでしょうか。

どうも速さや距離といった数字に縛られている方が多いように思います。

 

スポーツの本質は楽しむことです。

自分をコントロールするということにはもちろん精神面・感情面をも上手く、穏やかにコントロールできるという意味もあります。

いたずらに自分を肉体的精神的に追い込むことから離れてもいいのではないでしょうか。

 

良きランニングライフの参考にしていただけたら幸いです。