ケニア人は胸で腕を振る?
今回はケニア人やアフリカ系のランナーによく見られる腕振りについて書きたいと思います。
ケニア人ややアフリカ系のランナーによく見られる腕振りとしては写真にもあります通り、腕が体の前に来た時に肘をかなり曲げた状態になります。
ケニアでトレーニングしたときもかなり多くのケニア人ランナーに見られました。
この角度は生理学的に肘の曲げられる範囲ギリギリに近いです。
(肘の曲げる場合の関節可動域はまっすぐにしているときを0°とすると145°です。参照:上肢関節可動域)
日本人ではほとんど見られません。
多くの人は腕が前に来た時、肘が90°ほど開いています。
(写真で前から4番目の私がちょうどそのくらいになっています)
さて、何故ケニア人はこのように腕をたたんでいるのでしょうか。
たたんでいることによるメリットから考えてみます。
肩を支点としてみた場合ですが腕をたたんでいる、閉じている状態は開いているときに比べ、重心が支点である肩に近くなるため、腕を振るときに必要な力が少なくて済みます。
平たく言うと楽に腕が振れるわけです。
【腕振りモデル図】
長距離では効率を優先しますので、肘をたたんで走るケニア人の腕振りはここでも理にかなっていると言えます。
むろん、腕を開いて走った方が反動は大きく、”腕を振っている感覚”は強くなりますが、”腕を振っている”ことが必ずしも”効率良く前に進んでいる”とは限りません。
短距離を全力疾走するときであれば効率よりも最大出力を優先するので、そういう時はケニア人も肘を開き気味に走ります。
(下記動画7分55秒から)
更にケニア人の腕の振り方には見た目以外にも日本人と違う点があります。
ケニア人が腕を振るときは腕や肩、あるいは肩甲骨に意識がいっていません。
そのあたりが力んでいないのです。
ではどこで腕を振っているのかというと脇・胸の側面です。
筋肉で言うとちょうど前鋸筋があるあたりになります。
このあたりは肘を閉じた状態の腕の重心の位置と重なるのです。
(下の図参照)
動かす部分=力点が、腕の重心=作用点に近いほど腕を動かすのは楽になるので、力点が脇・胸の側面にあるのは合理的だと考えられます。
私も体幹が使えるようになって、腕振りがこのようになってきましたが、腕を”振っている”という感じがないです。
腕が軽いのと体幹の動きについてきているだけなので、上の図にあるように胸の側面に腕がくっついて前に来る感覚です。
肩甲骨に力が入っているとこの動きを阻害しますので、肩のあたりは全く力を入れないです。
なので、形だけケニア人のように腕をたたんでも意味がありません。
彼らは体幹を使って走っているので腕や肩の力は必要なく、結果的にたたむような形になっているだけです。
また体幹の動かし方も背骨を軸に回転するというよりは、背骨が反り胸の片側だけ前に出すのに従って腕も前に振られるという感じが近いです。
この感覚は実際に体幹が使えていない人には全くイメージつきにくいので、是非インターロックトレーニングをされることをおすすめします。
(インターロックトレーニングはケニア人に近づくための体幹連動トレーニング - ランニング言いたい放題参照)
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