ケニア人とベアフットランニング
この記事を読まれている皆さんは裸足で外を歩いたことはありますか。
あるいは走ったことはありますか。
私は4・5年前からベアフットランニングを初めて、何度も外を裸足で走ったことがありますが、あれですよ、痛いですよ。
理論的歴史的には裸足が正しいはずですが、現実はとても厳しいです。
今回はケニア人とベアフットランニングについて書いていきたいと思います。
ケニア人ランナーが足が速い理由の一つに「子供のころに裸足で学校に走って通っていたり、裸足で練習していたから」ということがよく言われています。
(参考リンク:
なぜ、ケニア人はとてつもなく速いのか (2ページ目):日経ビジネスオンライン
デービッド・ルディシャ:「走るのはとても刺激的だ!」: 中長距離情報)
ケニアの道は私が行ったニャフルルもそうでしたが、基本的にクロスカントリー・不整地です。
生活に使われる道路も崩れないように自然にある大きな石を敷き詰めた、ごつごつした道か、硬い土であることがほとんどです。
そんな環境の中で生まれた時から裸足で過ごしてきたわけですから、身体能力や技術は推して知るべし、です。
ケニア人は「Born to Run」ではなく「Bone to Run Barefoot」であったわけです。
(適当に書きましたが英語の表現はあっているでしょうか?)
ただし、現代のケニア人は状況が異なります。
以前の記事(ケニア人はもう裸足で走ってない - ランニング言いたい放題)でも書いた通り、今のケニア人は裸足で生活していません。
人口3万人程度の田舎であるニャフルルでも、子供もみんな靴を履いてますし、ランナーも裸足で走っている人はいませんでした。
ただ、それでもランナーたちを裸足でクロスカントリーを走らせると10kmを30分ほどで走れてしまいます。
全く裸足で走ったことが無いにも関わらず、です。
もちろん彼らも痛いとは言っていましたし、血豆ができていた選手もいました。
しかし、これがもし日本人だったら、いきなり裸足で整地されていない荒地を走れるランナーが一体どれくらい居るのか考えると、やっぱりケニア人は凄いです。
ケニア人が何故このようなことができてしまうのか、私なりに考察しました。
ケニア人のランナーの中には子供のころ裸足で育った選手もまだ存在します。
30代以上のランナーは子供の時は裸足で育っていて、まだ現役で走っている人もいるのです。
(参考リンクのデービッド・ルディシャ:「走るのはとても刺激的だ!」: 中長距離情報では800m世界記録保持者も「裸足でトレーニングしていた」とあります)
そしてその裸足で育った選手と今の若い選手が一緒に練習するということもあるわけです。
そうすると何が起きるのかというと裸足で育った選手のフォームに若い選手が影響を受けるのです。
私は便宜的にこの現象を「ランニングフォームの継承」と勝手に呼んでいます。
同文化圏内の集団はお互いに影響を受けるために、ある程度似たランニングフォームに収束します。
難しい言葉になってしまいましたが、簡単にすると一緒に走っているとフォームが似てきますよ、ということです。
つまり、今のケニア人ランナー達のランニングフォームは”まだ”生きているベアフットランニングフォームの一つなのです。
失われていない技術なのです。
日本人の場合だと、私は沢山のベアフットランナーと知っていますが、その中に子供の時、裸足で生活していた方はいません。
しかもケニアのような不整地で、という条件も加えるとおそらく大正か昭和初期生まれの方しか該当しないでしょう。
日本人が裸足でなくなってから、すでに三世代・四世代に入っているのです。
日本のベアフットランナー多くは私も含め、普段の練習に裸足を取り入れることによって裸足の技術を取り戻そうとしている方がほとんどです。
大多数の日本人からは裸足の文化および運動の技術がほぼ失われつつあります。
話が少しそれますが、ナンバ歩き、あるいはナンバ走りはご存知でしょうか。
日本ではまずまず有名なワードですが、私は全く信じていません。
なぜならナンバの技術は一度完全に”失伝”してしまっているからです。
技術は一度失伝してしまうと再現するのが非常に困難です。
裸足の技術は日本では絶滅寸前、ケニアでも今のうちにきちんと分析しないと10年後には無くなっているかもしれません。
だから私はケニア人の動きに注目しています。
そしてベアフットランニングの技術は残す意味のある重要なものだとも考えています。
なぜなら裸足でないと、シューズを履くと人間は退化するからです。
これは生物・自然の摂理ですので、誰にも覆しがたい事実です。
高機能のシューズを履けば、足の能力、ひいては身体能力は退化します。
私は一人のアスリートとして、身体能力が退化する選択肢をなるべく取りたくはないのです。
(現代日本に生きている限り、ささやかな抵抗かもしれませんが)
ケニア人ランナーもほとんどがシューズを履いて走っているので、今後緩やかに弱くなってしまうのではないか、と私は予測しています。
現にケニアのコーチが「最近の選手はケガが多い」と言っていたと話には聞きました。
どんな高性能なシューズを作ったところで、シューズは走りません。
走るのはあくまでも人です。
アスリートであるならば、自身の身体能力を磨いて競技に挑むことが大切なのではないでしょうか。
少し熱がこもってしまいました。
今回はこの辺にしたいと思います。
お付き合いいただきありがとうございました。
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