ランニング言いたい放題

日本ベアフットランニング協会公認コーチ、Vibram FiveFingers トータルアドバイザー。走るのが好きな人|裸足で走ったりケニアで走ったり|メインテーマは『ケニア人ランナーの動きの再現』です。お問合せ:hadashi.rc@gmail.com。by須合拓也

走る時に足を”引き上げる”ということ

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普段道端で遭遇するランナーの方たちを見ていると本当にいろいろなフォームをしています。

同じ走る動作でも人によって体の使い方が全然違うなと思う次第です。

 

今回は走る時の足の効率的な動かし方について考察してみました。 

 

 

さて皆さんは走る時にどのように足を使っているでしょうか。

恐らくほとんどの方は具体的かつ明確に説明できないと思います。

 

私が見る限りでよく見るパターンとしては二つあります。

一つは足を前に振り出そう、または上げようとする使い方です。

もう一つは足で地面を強く蹴りだす、後ろの方向に力を入れる形です。

 

この両方とも私は無駄が多いと思っています。

 

まず前に振り出す、または上げる場合から説明します。

 

足を前に振り出す場合、力の向き(ベクトル)は体の重心のあたりを中心とした弧の軌道に近いものになります。

 

図1

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ちょうど野球のバットを振っているのと同じです。

 

そうやって足を前に振り出すのはかなり労力を要します。

何故なら体の重心から遠いところで、モーメントが大きい状態で動かしているからです。

上り坂や階段を走る時などは特にこのようになっている人が多いです。

つまり、重心から離れたところで足を上げたくなるのです。

 

これがどのくらいきついかというと、重いものを両手で持ち、肘を伸ばしたまま胸の高さまで上げるようなものです。

 

もう一つは足で地面を強く蹴る場合もベクトルが後ろ向きになるだけで、基本的には同じです。

どちらも重心から離れたところで力を出そうとしているので、非効率です。

 

ではどうやって足を動かせば効率的でしょうか。

 

これは、体の重心に向かって足を”引き上げる”ことだと私は考えています。

言葉だけで説明するのは難しいので、ここからは図に沿って説明します。

 

図2.足を引き付ける場合の足の動き

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走っているとき、慣性の法則によって体及び重心は一定の速度で進みますが(赤い矢印)、地面についている足(1)の速度(絶対速度)は0になります。

重心から見ると地面についている足は重心が進む速度と同じ速度で後ろに進んでいるとも言えます。(青い矢印。赤い矢印の速度=青い矢印の速度)

足が地面から離れると今度は足も体に引っ張られて重心の進む速度(赤い矢印)と同じ速度で進み始めます。(緑の矢印)

合わせて足の後ろ向きの動き(青い矢印)は足が最大限後ろに言った時点で消失します。(図中(4)のあたりから)

 

足が地面から離れるあたり(2)から足を重心に向かって引き付けるように動かす(黄色い矢印)のですが、足の軌跡は青い矢印や緑の矢印の動きが加わることにより円を描くようになります。

 

これの何が効率的かというと、まず筋力を能動的に使っているところが黄色い矢印だけである点です。

重心に向かって動かすのは先に書いた重心から離れたところで動かすことに比べたら段違いに楽です。

 

嘘だと思ったらその場でもも上げをしてみてください。

右足はももを水平まで上げて膝の角度が90度になるように10回、次に左足は踵を垂直に上げる動きを同じく10回です。

恐らく左足のほうが断然楽だと思います。

 

また、足がたたまれている点にも注目したいです。

図の(4)から(6)にかけて重心の進む力(赤い矢印)と同じ力(緑の矢印)が足にかかりますが、膝が曲がって足全体の長さが半分近く短くなるためにモーメントが小さくなり、足が前に出る速度が速くなります。

ちょうどフィギアスケートの選手が氷上で回転するときに、伸ばしていた腕を縮めると回転速度が急に上がるのと原理は同じです。

赤い矢印と緑の矢印は前に進む力は同じですが、足が畳まれてモーメントが小さくなった分だけ急加速するのです。

 

このおかげで足は体が進むよりも遥かに高速で前に勝手に出されるわけです。

ただ足を重心の方向に引いただけで。

 

こうすることによって最小限の力で足を加速し、しかもストライドも長くなるというおまけつきです

 

日本代表レベルのランナーでも世界トップクラスのランナーでも、速い選手は皆、踵がお尻につきそうなくらいまで足が畳まれています。

逆にあまり速度が速くない市民ランナーは膝が少し曲がったくらいで筋力を使って頑張って足を前に出している方が非常に多く見受けられます。

 

足が畳まれているか、そうではないかで速度と効率の良さは見た感じで多少分かります。

ただし、本当に効率が良い選手はおそらく足をうまく引き付けるだけしか力を使っていないでしょう。

 

形だけ先ほどの図2のようにはなっているものの、筋力で形だけ再現しているが故に効率的ではなく、結局すぐに減速してしまうランナーも少なくありません。

 

重要なのは頭の中でこれをきちんと理解して、実際に走る時に再現できているかどうかです。

なので、出来ていない方であればしっかりと理論を学んで動き作りを行ったほうがいいです。

 

この引き上げる動きは単に引き上げればいいわけではなく、引き上げる向きとタイミングが重要ですが、それはまた次回の記事にしたいと思います。

 

お付き合いいただきありがとうございました。 

 

↓続きがあります!

足を引く②~足がついた瞬間から引き始める~ - ランニング言いたい放題

 

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