ランニング言いたい放題

日本ベアフットランニング協会公認コーチ、Vibram FiveFingers トータルアドバイザー。走るのが好きな人|裸足で走ったりケニアで走ったり|メインテーマは『ケニア人ランナーの動きの再現』です。お問合せ:hadashi.rc@gmail.com。by須合拓也

足を引く②~足がついた瞬間から引き始める~

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runner-takuya-sugo.hatenablog.com

前回記事では足を引き上げることにより効率的に走ることができることの説明を行いましたが、その続きの記事になります。

 

今回は足を引くタイミングについて説明したいと思います。

 

 

足を引くタイミングを説明するに当たって、まず人が走っているときにどういったサイクルになっているかを時間毎に見ていく必要があると思います。

 

人の走るサイクルは停止状態から始まります。

 

停止状態から前に体を倒すと同時に左右どちらかの足が上がります。

上がった足が前方の地面に着地しようとしますが、着地する前にもう片方の足も地面から離れるので、一瞬体が空中に浮かんでいる状態になります。

先に上げたほうの足が着地してからは【着地 → 最大荷重 → 離地】と体から見て足が後ろのほうに行くサイクルに入ります。

足が後ろに行き切って離地してからはまた一瞬宙に浮き、今度は逆の足が着地します。

 

単純にすると【宙→着地→最大荷重→離地→宙】のサイクルを持続させるのがランニングという動作ですが、この1サイクルにかかる時間はどれくらいだと思いますか。

 

大抵の方はそこそこのペースで走る時、1分間に180回前後のピッチになります。

つまり1分間で180サイクルです。

1秒にすると3サイクル。

つまり1サイクルは約0.3秒。

 

いかがでしょうか。

思ったよりも早いでしょうか、それとも遅いでしょうか。

1サイクルでこの時間なので、サイクルの各場面、接地や最大荷重・離地などにかかる時間は本当に一瞬のことです。

 

この約0.3秒の中のどのタイミングで引けばよいかが今回のメインテーマになるわけですが、ここでもう一つ、考えなければいけない要素があります。

それは人間の反射神経、つまり人間が何かの刺激に対して動き出すまでにかかる時間です。

 

反射神経、あるいは専門的にいうと反応時間ですが、これは状況や刺激によってさまざまな数値で出るため一概に言えませんが、参考として単純で平均的な反応時間は、視覚刺激(ランプが光ったらボタンを押す、など)では0.18から0.2秒、聴覚刺激(音が聞こえたらボタンを押す、など)では0.14-0.16秒だそうです。

(参考リンク:反応時間 - Wikipedia、より詳しい説明は反応時間 - 脳科学辞典

 

非常に簡単に考えると何かの刺激を感じて動き出すまでには単純な動作でも約0.15秒かかる、ということです。

 

ここまでをまとめると1サイクルにかかる時間が0.3秒で、反応時間が0.15秒。

この数字を覚えておいてください。

 

さて、1サイクルにかかる時間は0.3秒ですが、今度はそれを各場面で分けていきます。

まず地面に足がついている時間と、宙に浮いている時間です。

 

ランナーの接地時間について分析している記事によりますと、地面に足がついている時間は以下のようになっています。

野口みずき選手:0.150ミリ秒
高橋尚子選手:0.167ミリ秒
男子学生選手:0.169ミリ秒

Garminは、レベルの異なる多くのランナーに関してリサーチを行いました。一般的に、経験豊富なランナーは、接地時間が短い傾向にあります。優れたランナーの接地時間は大抵200ms以下です。

(参考リンク:上級者は接地時間が短い!けど、接地時間を無理に短くするのはよくない![ランニング独自分析]

 

仮に、一般的なランナーのそこそこ速いペースの接地時間を0.2秒、宙に浮いている時間を0.1秒としましょう。

つまり、足を引くタイミングは【接地→最大荷重→離地】の間の0.2秒のうちのいずれかになります。

 

この0.2秒の中で足を引くのに最も良いのは地面についている足よりも体の重心が前にある最大荷重→離地の間です。

前回記事参照

 

ただし、先ほどの反応時間の0.15秒を考えると、足が地面についた瞬間、その感触を反応開始のスイッチとして足を引くとちょうど良いタイミングになります。

 

【接地→最大荷重→離地】を0.2秒とし、【接地→最大荷重】と【最大荷重→離地】を等しいと仮定して0.1秒ずつと考えると、接地を起点とする反応時間の0.15秒後はちょうど【最大荷重→離地】の中間となります。

つまり、足を着いた瞬間から上げようと動くと、最大荷重を過ぎて足が後ろに流れ始めたタイミングで実際に上がるということです。

 

この例は一般ランナーのそこそこ速いペースでの想定になっていますが、レベルの高いランナーであれば接地時間が短いだけでなく、反応時間も恐らくより短いでしょう。

(或いは反応時間が短いからこそ接地時間も短いのかもしれません)

 

その根拠は反応時間は繰り返し学習している動作についてはより短い時間で反応できるという報告があること、目や耳の感覚よりも触感を刺激とする反応時間のほうが生物として原始的な感覚なためにもっと早いだろうということが上げられます。

(触感を刺激とする反応時間は実験のデータがないのが残念ですが)

 

もしかしたら人間の足の速さは反応時間に比例するのかもしれません。

 

足を引くタイミングは足裏の接地の触感・皮膚感覚を起点とする、というのが今回の結論ですが、この感覚をトレーニングする際は当然裸足のほうが有利です。

 

シューズではソールにクッションがあるために足裏の感覚が鈍りやすく、かつ接地の衝撃が足に伝わるまでにほんの僅かな時間ですがロスが生じます。

反応時間は感覚への刺激が強いほうが短くなります。

そのためこのロスは確実に足を引くタイミングを遅くし、結果接地時間が長くなり、本来発揮できるはずの速度よりも遅い動きを学習してしまいます。

 

これは長距離であっても短距離であっても無視できない差になるのではないかと思います。

 

現代のランナーはほとんど大多数の選手がシューズを日常的に使っているためあまり考える必要はないかと思われがちですが、裸足でそういった感覚を身に着けているアスリートとそうでないアスリートが同じシューズでレースに出た場合は話が違います。

 

事実、現在の世界記録クラスのランナーは短距離でも長距離でも幼少期に裸足で生活していた選手が散見されます。

 

もしより足を速く引く、つまり速くなることを考えたら裸足で動きを学ぶというトレーニングは必要なのではないかと思われます。

 

もう少し足を引くことについて説明することがありますが、また長くなるので今回はこれでお終いにします。

 また次回をお楽しみください。

 

↓次回記事です。

足を引く③~ケニア人ランナーはスーパーボール!?~ - ランニング言いたい放題

 

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