ランニング言いたい放題

日本ベアフットランニング協会公認コーチ、Vibram FiveFingers トータルアドバイザー。走るのが好きな人|裸足で走ったりケニアで走ったり|メインテーマは『ケニア人ランナーの動きの再現』です。お問合せ:hadashi.rc@gmail.com。by須合拓也

何故ケニア人ランナーは前傾姿勢なのか

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ケニア人をはじめとするアフリカ系ランナーと言ったら前傾姿勢の選手がほとんどですが、今回は何故ケニア人ランナーは前傾姿勢になるのか、それを再現するためにはどうすればよいか考えてみました。

 

私のブログでも以前ケニア人の前傾姿勢の理由について触れていますが(ケニア人の骨盤前傾の秘密はハムストリングスにある? - ランニング言いたい放題)、この記事ではもう少し別の視点から見ていきます。

 

 

読者の皆さんも不思議に思ったことはないでしょうか。

ケニア人ランナー、アフリカ系ランナーは皆前傾姿勢になっています。

対して日本人のランナーを見ているとほとんどの方は上半身の姿勢が垂直に近く、中には前傾姿勢の方もいますが、ケニア人と比べるとその角度は浅いです。

 

ケニア人の骨格や体形がそうさせるかというと、それは違います。

何故ならケニア人も日本人もホモサピエンス種の動物で祖先は同一だからです。

生物学的に見れば高々十数万年前にアフリカで一緒に過ごしていたケニア人と日本人の差はほとんど全くありません。

 

そもそも順番が逆です。

体形が違うから体の使い方が違うのではなく、体の使い方が違うから体形が変わるのです。

ケニア人だろうが日本人だろうが動物としての元々のポテンシャルは同じです。

 

だとすれば原因は環境の影響による体の使い方の違いにあると思います。

何故かというと同じランナーであってもケニア人の集団と日本人の集団で明らかに傾向が異なるからです。

(今回はその傾向の違いのうち、前傾姿勢に焦点を当てているわけです)

同じ種の動物のそれぞれの集団で何らかの違いがあるのであれば、その要因は環境にあります。

 

ではその環境の違いのうち、最も影響のある要素は何かと考えると、それは『地面』でしょう。

 

以前の記事(ケニア人がフォアフット走法になる理由 - ランニング言いたい放題)でケニア人は不整地で生活して走っているからフォアフットになりやすいのではないか、と言う考察を書きました。

そして前傾姿勢もクロスカントリーによってもたらされるのではないかと考えています。

 

ここからは日本人がおかれている環境と比較しながら説明していきたいと思います。

 

日本人ランナーが走る地面状況としては、ほとんどがアスファルトか或いはタータンなど平坦にならされた、とても滑りにくい環境にあります。

対してケニア人の置かれている環境であるクロスカントリーは、整地されていなく細かい起伏の連続であり、かつ摩擦の少ない地面状況です。

 

両者の違いは姿勢に大きく影響します。

これは坂で考えるとわかりやすいです。

 

アスファルトの場合だと地面の摩擦力が高いので、足で踏ん張ることにより坂で重力の方向に沿って垂直にまっすぐの姿勢を取ることができます。

これが極端に摩擦力の少ない凍った坂道の上で同じく垂直にまっすぐの姿勢を取ろうすると転倒してしまいます。

嘘だと思ったら是非凍った坂道で試してみてください。

私は雪国育ちなので何回も自分の体で体験済みです。

けっこう痛い目に合うのであまりお勧めしませんが、体で覚えられるという点では良いかもしれません。

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凍った地面の上のように摩擦力がほとんどなく、足で踏ん張って姿勢を制御できない状況ではスキーのように前傾姿勢を取らざるを得ないのです。

滑る速度、つまり進む速度に合わせて重心を前に持っていく=前傾姿勢を取ることで姿勢を維持できるのです。

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さて、クロスカントリーは凍った地面ほどではありませんが、アスファルトに比べると摩擦力は大きくなく、足で踏ん張って姿勢を制御するというのはそれほど上手くいきません。

特に走って勢いよく進んでいるときに下り坂で垂直にまっすぐな姿勢を取るとバランスを崩しやすいです。

トレイルランニングの下りが苦手な人によくありがちな失敗です。

 

トレイルランニングクロスカントリーなどの不整地での下り坂はスキーのように前傾姿勢かつ重心を落とし、下半身を柔らかくして回した方が安定して走りやすいです。

 

では地面が平らな場合ではどうでしょうか。

 

これも基本的には下りの時と同じです。

進む速度に合わせてちょうどいい位置に重心を持ってきたほうが、つまり前傾姿勢のほうが姿勢を維持するのに余計な力を使わなくて済みます。

逆に進んでいるのに重心を前に持ってこない姿勢だと、上半身に対して後ろ向きの力が働いてしまいます。

倒れないためには後ろ向きの力を打ち消すだけの力をかけ続けなければいけません。

これは本来なら必要のない力なので、ランニングエコノミーの低下要因となりえます。

 

図で表すとちょうど下のような形になります。 

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姿勢維持に必要な力はあまりスピードが出ていない状態では無視していいくらいのものですが、前に進む力が大きければ大きいほど比例して姿勢維持に必要な力も大きくなります。

なので日本人であってもレベルの高いランナーは前傾姿勢の人が多く、それよりもさらにレベルの高いケニア人ランナーはほとんど全員前傾姿勢になっています。

 

つまり、ランニングにおいて前傾姿勢であるほうが有利ということにはなりますが、だからと言って無理に前傾姿勢にしてはいけません。

 

ケニア人がちょうどよく前傾姿勢にできるのは

体幹の可動性が高く、体幹で重心のコントロールがしやすい

②速度に対して重心をどこに持ってくれば良いか感覚的に知っている

この二つがあります。

 

体幹の可動性が低く、重心の感覚もない人が形だけ前傾姿勢をするとケガにつながりますので注意が必要です。

 

ケニア人のような前傾姿勢を身に着けるためには体幹の可動性を鍛え、重心の感覚を養えば、自ずと近づいていくでしょう。

 

その為の方法としては、体幹については当ブログの過去記事「ケニア人に近づくための体幹連動トレーニング - ランニング言いたい放題」にあるので参考にしてください。

 

重心の感覚を養う方法は、先にも挙げたスキーのほかにローラースケート、アイススケートなどが有効でしょう。

次点にスノーボードスケートボードなども姿勢は似通っているのでいいと思います。

 

また裸足、もしくはベアフット系のシューズでクロスカントリーやトレイルなど不整地でランニングをすることも非常に効果的です。

こちらはスキーなど違い、ランニング時の前傾姿勢の動きを身に着けるのに非常に直結しているのでかなりおススメです。

初めての方は足裏が痛いためにいきなり長い時間、速い速度は難しいでしょうが、興味がありましたら是非ウォーキングからでもいいのでやってみてください。

くれぐれもケガにはお気をつけて。

 

今回はこのあたりで筆を置きたいと思います。

お付き合いいただきどうもありがとうございました。

 

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