ランニング言いたい放題

日本ベアフットランニング協会公認コーチ、Vibram FiveFingers トータルアドバイザー。走るのが好きな人|裸足で走ったりケニアで走ったり|メインテーマは『ケニア人ランナーの動きの再現』です。お問合せ:hadashi.rc@gmail.com。by須合拓也

ケニア人は胸も前傾して走る

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2 Races, 2 Records, 1 Athlete - Kenenisa Bekele | Olympic Records - YouTube

 

アフリカ系のランナーの姿勢は前傾していることが特徴の一つですが、今回の記事はケニア人を始めとしたアフリカ系ランナーの走る時の姿勢の話です。

 

さて前傾姿勢と言ったら骨盤の前傾が良く注目されます。

骨盤が前傾しているから上半身が前傾しているということです。

 

 

しかし、実は前傾しているのは骨盤だけではありません。

胸、正確に言うと胸郭も彼らは前傾しています。

写真を交えて詳しく説明していきます。

 

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トップ画像の拡大ですが、一番前の選手が日本人の竹澤健介選手、2番目がベケレ選手です。

比べるとベケレ選手は腕を後ろに振った時にかなり大きく開いています。

単に上半身が前傾している以上に腕が後ろに開いているように見えます。

 

解剖学的には腕を後ろに振る時(肩関節の伸展)の可動域は、通常50°と言われています。

(参考リンク:肩関節に関節可動域制限が起こる原因はなにか - rehatora.net

 

竹澤選手はそれに近いように見えますが、ベケレ選手は明らかにそれ以上に動いていますね。

日本人と比べてケニア人のランナーが(ベケレ、エチオピア人ですが)肩関節の可動域に特に差があるということはあまり考えられないので、答えは一つ。

 

それが胸部、胸郭の前傾です。

 

胸部が前傾していると肩関節自体の可動域が変わらなくとも、腕は後ろにより高く上げられます。

写真の前から三番目、ケニア人の選手は水平近くまで上がっていますが、ちょうどよい例だと思います。

 

もちろんこれは他のアフリカ系ランナーにも見られます。

 

例えば800m現世界記録保持者のルディシャ選手(先頭)。

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Rudisha Breaks World Record - Men's 800m Final | London 2012 Olympics - YouTube

 

フルマラソン現世界記録保持者のキプチョゲ選手(中央赤いユニフォーム)。

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Sub 2 Hour Marathon – NIKE #BREAKING2 Attempt - YouTube

 

つまり、ケニア人を始めとしたアフリカ系ランナーの姿勢を説明すると骨盤は前傾し、腰(腰椎)は起き上がるように反りつつ、胸(胸椎)は後方に丸い、S字のアライメントになっているのです。

(そして頸椎は後ろに沿っています)

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要するに前傾しているのは骨盤だけでなく、胸郭も前傾しており、胸にあたる背骨(胸椎)は丸くなるということです。

なので腕も後ろに高く上がります。

 

見た目は胸を張っているようにも見えますが、これは単純に体幹の筋肉が発達しているからでしょう。

実際は胸を張っていないのです。

 

これは走っているときの背中を見てもわかります。

彼らの背中は肩甲骨が飛び出るように盛り上がって見えます。

胸郭が前傾しているため、なだらかに斜めになった背中の肋骨部分に肩甲骨が乗っかっているのです。

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日本人で走っているときに肩甲骨が盛り上がって見える人はほとんどいません。

これは胸を張る=背骨が真っすぐに近いために、肩甲骨が落ちないよう背中にぴったり張り付いているからです。

骨の支えのない肩甲骨を常に筋肉や腱が引っ張って維持しているので、背中が平らになります。

(そしてこの姿勢は常に姿勢維持に筋肉を使うために疲れやすいとも考えられます)

 

また、ケニア人などアフリカ系ランナーの体形を前から見ると首の横の筋肉である僧帽筋が盛り上がって見えますが、これも胸郭が前傾している証拠です。

 

ケニア人が何故この姿勢になっているのかというと、恐らく生活環境に要因があると思います。

 

ケニア人でランナーになるのは大抵裕福ではない農家の子供です。

彼らは子供の時から家の手伝いや通学など、物を手で持って長い距離を徒歩、あるいは走って移動する機会が多いです。

肩甲骨が肋骨によってある程度支えられていると長い時間、手で物を持つのが楽になります。

 

その他にも要因は考えられますが、一番大きいのはこれでしょう。

 

さて、この胸の前傾ですが日本人の多くの方はすぐにマネをするのはやめたほうがいいと思います。

何故なら日本人の大多数は背骨の可動域(特に動的な)が狭いです。

背骨を波打つように動かす習慣がないので、単に背骨全体を前屈したり、反ったりすることは出来ても、S字の形には出来ません。

日本人は背骨、体幹を真っすぐ固めるものという認識を意識的にも無意識的にも強く持っている方が多いので、形だけこの姿勢をマネすると腰や背中を痛めるでしょう。

 

再現するためには背骨を複雑に動かす練習が必要です。

色々とトレーニング方法はあると思いますが、個人的には当ブログにも書いているインターロックトレーニングをおススメします。

ケニア人に近づくための体幹連動トレーニング - ランニング言いたい放題

このトレーニングがきちんとできて、背骨回りの動きの緩急をコントロール方であれば、恐らく体を痛めることなくケニア人の姿勢をかなり近い形で再現できるのではないでしょうか。


この背骨のS字姿勢、胸の前傾が上手くできると背骨全体が1つの大きなバネのように動いてくれるようになり、バランスのコントロールから衝撃吸収、はたまた加速・跳躍まで非常に使い勝手の良い武器になってくれます。

(詳しくは以前の記事ケニア人のようにストライドを長くするたった1つの方法 - ランニング言いたい放題などをご参照ください)

 

もっと楽に走りたい方、速くなりたい方は是非チャレンジしてみてはいかがでしょうか。

 

 

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