腕振りは推進力にならないしリズムも取ってない
今回はランニングの時の腕振りは何のためにしているのか、というお話をしたいと思います。
まず題名にある通り腕振りは推進力にならないし、リズムも取っていないことについてです。
まず何故腕振りは推進力にならないのかというと、実際に試していただければ簡単に証明できます。
立っている状態で腕だけを使って前に進んでみてください。
あなたが人間でしたら多分恐らくまず前に進むことはできないでしょう。
これは空気の抵抗が少なすぎるので腕をいくら振ったところで人間の体ほどの重さのある物体を前に進められるほどの推進力を得ることができないからです。
水の中でしたら水の抵抗力と浮力があるので腕だけでも進めますが、陸上では無理です。
仮に前に進めたとしても非常に困難か、非効率なので現実的ではありません。
(例えば飛行機のプロペラのように腕を動かせたら前に進めますよ、動かせたら)
では次はリズムについてです。
リズムというと定義が曖昧なので、ここではリズム=周期として話します。
ランニングは一連の動作を連続的に繰り返す運動で、一定の周期=リズムが存在します。
なので仮に「腕振りでリズムを取る」ことが可能とすると、それは「腕振りが主体・大本となってランニングの動作の周期を保っている」ということになります。
ようは腕振りが音楽で言うメトロノームのような役割をしていると仮定するということです。
ですが、これは現実のランニングに当てはめるとそのように機能していないことが分かります。
例えば平らな道から急な坂道に入るとランニングのリズム=周期が変わります。
坂道によってリズムが変えられたわけです。
もちろん坂道に逆らってリズムを一定に保つことは決して不可能ではないですが、多くの場合において現実的ではないです。
これが不整地になるとより顕著になります。
地面に不規則な凹凸があれば、それに合わせて走りのリズムを絶妙に変えないといけませんが、これを無視して腕振りのリズムに沿って走ることは非効率で且つ危険を伴います。
地面の状況によってランニングの動作の周期を変えざるを得ないということは、リズムは地面の影響を直接受ける、もしくは地面に直接影響を与える足及び骨盤から背骨、頭蓋骨に至るまでの上半身の体幹部分が主体・大本であると考えたほうが自然です。
地面との関係性が非常に限定的な腕がランニング動作のリズムの主体・大本となるというのは物理的に無理があるのです。
日本の多くのランナーやその関係者が腕振りでリズムを取れると錯覚しやすいのは、人工的な環境である真っ平らなアスファルトや陸上競技場で走る機会が圧倒的に多いからだと思われます。
じゃあ腕振りの役割は何かと言われたら、それは「転倒しないようにバランスを保つ」です。
走る時は足を大きく前後に動かすので当然大きくバランスが崩れますが、人間はそれでも倒れないように腕振りによってバランスを保っているのです。
だから速く走る時には足の動きの速度に合わせて腕も早く動かす必要があります。
ただし、前述にあるように腕振りを推進力になるとか、リズムを取ると思って動かしていると無駄に力を使ってしまって疲れるだけです。
腕振りはただバランスとるためにやっていることなので、そんなに力はいらないんですよ。
これはトレイルランナーだったらよくご存じだと思います。
山の急激な下り坂を走る時に平地のような規則正しい腕振りしている人なんて一人もいません。
なお補足しておくと腕振りだけがバランスを保つ方法ではないです。
体幹部でもバランスは保てます。
そして体幹部をうまく使えていない人ほど腕に依存するので、特に速く走る時に比較的腕を開いて大きく振ってしまう傾向にあると考えられます。
走る時に体幹部が使えているかそうでないかを見分ける一つの目安にもなります。
以上で今回の話は終わりです。
お付き合いいただきありがとうございました。
↓記事が面白かったら投げ銭ください。