ランニング言いたい放題

日本ベアフットランニング協会公認コーチ、Vibram FiveFingers トータルアドバイザー。走るのが好きな人|裸足で走ったりケニアで走ったり|メインテーマは『ケニア人ランナーの動きの再現』です。お問合せ:hadashi.rc@gmail.com。by須合拓也

ランナーとケガ(2)~柔軟なランナーはケガしやすいし速く走れない~

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前回のお話しはランナーとケガの1回目、ランナーの運動バランスが悪いと書きました。

 

2回目の今回はケガの予防について考えを述べていきたいと思います。

 

 

前回、筋トレしてても運動バランスは全然良くないのでは、という仮説を説明しましたが、ケガの予防としてポピュラーな対策は筋トレだけではありません。

多くのランナーがケガしないための対策としてストレッチをされていると思います。

 

ただ、私はランナーのケガの予防策としてのストレッチにはかなり否定的な立場です。

 

もちろんストレッチが全く無駄だとは思っておりません。

例えば運動不足気味のランナーが準備運動として走る前にストレッチをすることは十分有意義だと思います。

 

ただし、多くのランナーにとってはケガの予防にはならないのではないか、と考えております。

理由を経験・現実的な側面と、理論的な側面から説明します。

 

まず経験・現実から説明すると上記に書いた通り、殆どのランナーの方は習慣的にストレッチをされていると思います。

これは私がランニングを始めた20年以上前から変わらないことです。

 

ストレッチ自体は普及し始めたのが1970年代らしいので、約50年ほどの歴史があることになります。

 

ですが、現実を見てみてください。

周りのランナー、或いはご自身はケガされていませんか。

ストレッチがケガの予防に本当に有効なら、なんでこんなにランナーはケガしているんでしょうか。

 

体力ギリギリまで練習しているから?

 

それは学生やプロのランナーであればわからなくもないですが、それほど体を追い込むことのない大多数の市民ランナーもケガをしているので、当てはまりません。

 

きちんとストレッチを理解して実施していないから?

 

先も話した通り、ストレッチが普及して50年ほど経っています。

それほど長い期間を擁して尚理解されないほどの高度で専門的な知識が必要だとしたら、やはりケガの予防策としては非現実的だと思われます。

 

それと私の経験から言わせていただくと股割りが出来るほど柔軟なランナーはケガも多いし、速くなれないです。

これは学生時代、該当する選手が何人かいました。

いずれも開脚して胸が地面に付けられるくらい柔らかかったですが、ケガしがちでかつタイムも他の選手に比べてかなり伸び悩んでいました。

 

なお5000mを13分台や14分台前半で走れる日本人の選手は体が硬めな印象で、特に足首は踵を地面につけたまましゃがめないくらいに硬い選手もいました。

 

では何故ストレッチはケガの予防になりえないのか、体が柔らかいとケガしやすく記録も伸びないのか説明します。

 

そもそもストレッチでケガが予防できると確実に言えるのは体が硬い方、つまり関節の可動範囲が狭いことが原因でケガをした方に対してのみだと思われます。

ケガの原因はいろいろ考えられますが、上記以外が原因で発生したケガに有効であるとは考えにくいでしょう。

 

合わせてストレッチの科学的な有効性を示した有力な論文もありませんし、寧ろ効果に対して懐疑的・否定的な研究もあります。

(ストレッチ後はパフォーマンスが下がったり、ケガの発生率に変化が無かったりといった感じです)

 

体が柔らかいことによってケガも増えるし速く走れないというのは、ランニングの動作の原理から考えると至極簡単です。

 

ランニングとは位置エネルギーや筋力が生むエネルギー、それと弾性エネルギーによって前に進む動作です。

(詳しくは過去記事:足を引く③~ケニア人ランナーはスーパーボール!?~ - ランニング言いたい放題をご参照ください)

 

そのうち弾性エネルギーとはバネやスプリングのような伸びたり縮んだりしたものが元に戻ろうとするときに発生するエネルギーなので、柔らかいバネ・スプリングは当然ですが弾性エネルギーは低いです。

つまり、柔らかいランナーは弾性エネルギーが低い分、筋力でエネルギーを補わないといけません。

 

しかも弾性が低い=弱いバネ・スプリングであるということは、ランニング時にかかる最大で体重の3倍もの衝撃を十分に吸収することができないので、ここも筋肉で耐えないといけなくなります。

 

もう無茶苦茶以外の何物でもありません。

他のスポーツならいざ知らず、長距離ランナーにとって柔軟であることはデメリットでしかないのです。

 

弾性エネルギーが高いと強い衝撃を吸収しつつ、そのほとんどを運動エネルギーに変えることができます。

まるでスーパーボールのように。

だから速い選手は強力なバネを持っている=硬いのです。

(なお運動不足で筋肉が硬直して体が硬い状態は上記とは違います。一緒にしちゃあかんです。)

 

今回の話をまとめますと

・ストレッチのケガ防止効果は非常に限定的である可能性が高い

・ストレッチをしすぎて体が柔軟になるとケガをしやすく、速く走れなくなる

 

以上の2点になります。

 

 次回はまた別のケガの防止方法についてになりますので、興味がありましたら是非。

 

↓次回の話はコチラ

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